罔殆庵

染井吉野ナンシーの官能世界

文芸書苑

北京陳情村

『北京陳情村』読了。著者は、とにかく北京の陳情村へほぼ二年通ったわけです。ただ、国際的に陳情村が話題になった時期をとうに過ぎ、著者も通うことの意義を見失いながらの訪問です。著者は、新聞記者のように社会の暗部を鋭くえぐるわけでもなく、チャイ…

『奔流中国21』『激流中国』

『奔流中国』と『激流中国』読了。かたやNHKで放送されたシリーズドキュメンタリーの書籍化、かたや朝日新聞の連載記事の書籍化です。大雑把な感想から言いますと、朝日の方が新聞紙面という制約があるのか、どちらかというと日本人から見ても目につく現…

トウ小平秘録

上下本の『トウ小平秘録』読了。本書は、トウ小平の評伝とはいえ、記述が年代順ではなく、1989年の天安門事件を軸に説き起こされています。ですので、まず中国の現代史の流れがおおよそ頭に入っていないと、わかりにくいところがあるかもしれません。新聞連…

ガイサンシー(蓋山西)とその姉妹たち

『ガイサンシーとその姉妹たち』読了。中国で旧日本軍がレイプや虐殺などを行なっていたということは知っています。そのようなことは決してなかったと言う旧軍人の証言もありますが、そういうことをしなかった人もいるでしょうから,それを否定するつもりはあ…

二月の花

『二月の花』読了。以前に読んだ『雲上的少女』が高校生の青春を描いたのなら、この作品は大学生の生活を綴ったものです。ただ、『雲上的少女』が北京を舞台にした、まさに「イマドキ」の高校生の物語、極論すれば舞台を東京だと言っても通じるような物語だ…

秋瑾 火焔の女

『秋瑾 火焔の女』読了。本屋では結構売れてるみたいですね、この本。でも、売れてる理由がわかりません。とりあえず中国近代の革命の志士、女性革命家として、その凛とした美しい肖像が鮮烈な印象を与える秋瑾の読みやすい評伝が出たことはうれしいことです…

世紀風雪(下)

『世紀風雪(下)』読了。上巻を読んだ時点でほぼ予想はついていましたが、下巻はいよいよ著者の時代、新中国の時代です。清朝皇帝一族なわけですから、文革の頃には相当な苦労があったものと思われますが、読んでいる限り、本当に底辺の生活をしたようには…

世紀風雪 (上)

『世紀風雪 (上)』読了。 清朝の皇族の苦労が偲ばれはしますが、主として清王朝時代を扱う上巻では、義和団や八カ国の侵攻など時代に翻弄される清朝の統治階級が垣間見えます。当然筆者はその時代には生まれていないわけで、祖父や父などから聞いた話で物語…

千年の祈り

『千年の祈り』読了。著者は大学卒業後アメリカへ渡り、そこで作家に転身を遂げた方だそうです。本作は短編集で、どの作品も独立しているので、タイトルで興味を持ったものから読み始めても何の問題もありません。作品はどれも現代中国の重苦しさ、息苦しさ…

街場の中国論

『街場の中国論』読了。内田樹さんがご自身のゼミでの中国論をテープ起こしして書籍にまとめたものです。内田さんはご存じのように、そしてご自身も書いていらっしゃいますが、中国学の専門家でもなければ、中国語が堪能なわけでもありません。もちろん国際…

胡同(フートン)の記憶―北京夢華録

『胡同(フートン)の記憶―北京夢華録』読了。朝日新聞で著者・加藤さんの中国記事はとても安心して、かつ信頼して読むことができましたが、その理由がわかるような加藤さんの中国体験エッセイです。中国取材の苦労は多々あるでしょうけど、この本は取材や生活…

北京大学てなもんや留学記

『北京大学てなもんや留学記』読了。『てなもんや商社』の著者ですから面白くないわけがないです。ただ、『商社』が「なんじゃ、中国!」的な爆笑エッセイだったのに比べると、中国をかなり深く理解し、中国語も堪能になったぶん、冷静かつ客観的に眺めてい…

丁庄の夢

『丁庄の夢』読了。中国のエイズ村の現実を活写した、でもノンフィクションではないんですよね。全体としてはフィクションなんでしょうけど、ここのエピソードについては、ほぼその通りの事実があったんじゃないかと推察されます。ひと儲けしようと、健康や…

周恩来秘録

『周恩来秘録』読了。毎晩、寝しなに少しずつ読んでいたので、上下間でかなり時間がかかってしまいましたが、ようやく読み終わりました。周恩来の生涯のすべてを網羅したものではなく、その原題が示すように晩年の周恩来に絞って書かれています。多くの評者…

孫子兵法発掘物語

『孫子兵法発掘物語』読了。 学術書というよりは手軽な読み物です。孫子の兵法やその発掘にまつわる学術的な蘊蓄は、巻末の浅野氏の解説を読んでいただければよいでしょう。 さて、本文。内容は面白いです。世紀の発見であるにもかかわらず、相当にぞんざい…

北京ドール

『北京ドール』読了。 中国では発禁になったそうで……。こういう作品って、感想に困ってしまいますね。 確かに、中国の若者のライフスタイルもずいぶん変わったな、ということはわかります。もちろん北京や上海など一部の都会でのことですけど。 むしろ、これ…

人民に奉仕する

『人民に奉仕する』読了。 現在の改革開放路線を取る前の中国の、とある軍隊での話です。この本のオビなどを読めばだいたいわかってしまうので書いてしまいますが、あらすじは上司の家の(事実上)雑用係として配属された農民上がりの兵士が、その上司が北京…

雲上的少女

『雲上的少女』読了。 何でも中国では、バレンタインデーにこの本をプレゼントするのが大流行したとか。わかる気もします。高校生の甘酸っぱい恋愛模様(恋愛とも言えないレベル?)を描いた青春小説です。 読了しての感想は「中国も変わったなあ」です。感…

女帝−わが名は則天武后

『女帝−わが名は則天武后』読了。 著者は中国人ですけど、フランス在住で、この本もフランス語で書かれたみたいですね。けっこう本屋の店頭でも積まれているので、目にした方も多いと思いますが……。 さて、内容は則天武后の一代記です。物語は則天武后の一人…

マオ

『マオ―誰も知らなかった毛沢東(上)』『マオ―誰も知らなかった毛沢東(下)』読了。 この手の本にしては文字が大きかったので、それは一般には読みやすいと言えるのでしょうが、あたし的にはむしろ読みづらさを感じました。 さて、「誰も知らなかった」と…

真実

『真実―日中、二つの国の天と地』読了。 日本留学中の父と日本生まれの華僑の子である母の間に生まれた主人公=著者が、日本人の夫と結婚の約束をし、日本に渡るまでの半世紀。共産中国の成立によって希望にあふれた祖国へ帰った両親は、当初はその理想のま…

沙門空海唐の国にて鬼と宴す

夢枕獏氏の『沙門空海……』(全4巻)を読みました。 分厚い4冊本ではありますが、改行の多い文体のため、見た目ほどの分量ではないですね。(この改行の多い文体、慣れるのにちょっと時間がかかりました。) それに中国モノは好きなので(笑)。 感想は、ま…