罔殆庵

染井吉野ナンシーの官能世界

新書いろいろ

『中国共産党「天皇工作」秘録』読了。

本書は、日中双方の政治家、研究社などに丹念に取材した成果を元に、彼らの証言から構成される日中政治交流史といった本です。交流史と言ってしまうと、かなりふやけた、甘っちょろいものを連想してしまうので、むしろ「疎遠史」と呼んだ方がいいかもしれま…

中国の異民族支配

『中国の異民族支配』読了。このところ、ウイグルやチベットでの騒乱が続いています。三農問題、格差問題と並んで中国の民族問題が、これからの中国の発展・安定にとってかなりの不安材料だということがわかります。これらに関する日本の報道では、ウイグル…

諸子百家―儒家・墨家・道家・法家・兵家

『諸子百家―儒家・墨家・道家・法家・兵家』読了。この十数年来の考古学的成果を取り入れた諸子百家の概論書です。ただ、考古学的成果が、あらゆる諸子の書に成果をもたらせたわけではないので、そこをあまり期待して読んでもいけないと思います。ある程度中…

中国という世界―人・風土・近代

『中国という世界―人・風土・近代』読了。こう書いてはなんですが、『コオロギと革命の中国』もそうでしたが、竹内先生、もうこういったたぐいの本をお書きになるのはやめた方がよいのではないでしょうか? あるいは編集担当者がもっと構成とかを考えて誘導…

漢和辞典に訊け!

『漢和辞典に訊け!』読了。 漢和辞典は漢字の辞典です。ただ、そう考えてしまうと日本語の辞典の一種だと思いがちです。でも、英和辞典、独和辞典、仏和辞典というように考えれば、漢和辞典も「漢」を日本語に置き換える外国語の辞典です。「漢」とは何かと…

〈満洲〉の歴史

『〈満洲〉の歴史』読了。 もう少し満洲国以前の満洲や満洲国崩壊後の中国東北地方に紙幅が割かれるのかと期待しましたけど、満洲にカギ括弧がついている書名からも予想できるように、基本的には満洲国を中心とした記述です。ただ、これまでの大陸侵略とか謀…

伝説の日中文化サロン上海・内山書店

『伝説の日中文化サロン上海・内山書店』読了。内山書店と言えば、まずあたしの世代では神田神保町、すずらん通りにある中国書籍専門店です。あたしが学生時代は現在の建物ではなく、二階の売り場で本を見ているとおばあちゃんがお茶を出してくれました。は…

紫禁城―清朝の歴史を歩く

『紫禁城―清朝の歴史を歩く』読了。紫禁城の案内と、各宮殿・建物にまつわる清朝の歴史を紹介している本です。現存する紫禁城にスポットを当てているため、元明の頃の紫禁城については触れられていませんが、それはサブタイトルでも明らか。また、資料が多く…

反中vs.親中の台湾

『反中vs.親中の台湾』読了。台湾史の簡単な概論書ってのはあります。台湾の成長の奇跡を解説した本もあります。そして台湾の悲哀や日本に対する複雑な感情を記した本もあります。でも、本書のように国民党VS民進党という図式で台湾史をまとめた本はなかっ…

訓読みのはなし

『訓読みのはなし』読了。 訓読みという独特の日本文化を、朝鮮やベトナムなど他の漢字文化圏の状況と比較しながら解説しています。内容は比較的多岐にわたっていますが、それぞれが小気味よいテンポで記述されているので、物足りなさや雑ぱくさを感じること…

日中「アジア・トップ」への条件

『日中「アジア・トップ」への条件』読了。朝日新聞に連載していた著者のエッセイを、緩くテーマを設定して、それに合わせて編集したものです。中国のこの十数年の変化はとても激しいので、ものによってはちょっぴり古びた感はありますが、日本も中国もどち…

不平等国家中国

『不平等国家中国』読了。著者は数年来、中国の学者と共同で何回もアンケート調査を実施しており、その結果を踏まえた中国社会の考察です。大学教授や古典学者、あるいは特派員などの生活経験に根ざした中国モノにもそれなりの大白さはありますが、こういっ…

愛国経済

『愛国経済』読了。著者は以前から朝日新聞で中国からの記事があるとしばしば目にしていた名前の方です。比較的男性が多いと感じていた中国特派員の中で女性だったので、女性の視点ならではのルポなどを興味深く読んでいましたが、本書そういった意味では男…

中国の五大小説(上)

『中国の五大小説(上)』読了。上巻では『三国志』『西遊記』を扱っています。ところどころ中国長編小説ならではの特長などを紹介したりしていますが、そういう細かなことにはこだわらず、あらすじで読む中国五大小説、といったノリで読み進めればよいので…

新華僑老華僑―変容する日本の中国人社会

『新華僑老華僑』読了。二人の著者の共著で、完全に分担執筆です。前半の長崎、神戸、横浜という日本の三大中華街のルポは、そこに住む華僑たちの声と合わせ、三都市の個性がわかり興味深かったです。三つとも行ったことがあり、どこもそれぞれ個性がありま…

北京−都市の記憶−

『北京−都市の記憶−』読了。言ってみれば歴史的な名所を中心とした北京のガイドブックです。いわゆる本屋の旅行ガイドブックのコーナーにある本と比べると、カラーじゃないし、取り上げたのは公園とか博物館などばかりだし、入場料や開園時間も書いてないし…

中国汚染――「公害大陸」の環境報告

『中国汚染――「公害大陸」の環境報告』読了。このところ新書で中国の環境問題に関する著作が何冊か続けざまに刊行されましたが、本書の場合、環境や公害問題の専門家が中国の事例にアプローチすると言うよりも、もとから中国の環境問題に関心を持って研究を…

評伝川島芳子

『評伝川島芳子』読了。著者は東大の修士を出たシンガーソングライターだそうですが、まだ若いのにずいぶんとよく調べています。コンパクトな新書ではありますが、四十年の川島芳子の一生を丹念に折っています。男装の麗人、東洋のマタハリ、中国人民の裏切…

「中国問題」の内幕

『「中国問題」の内幕』読了。 中国政治のこの数年、ほんの一、二年の動きをわかりやすく丁寧に解説してくれています。さすが長年の中国特派員として現場で取材を続けてきた著者ならではです。中国の動き、それが民衆のものであれ、政治世界のものであれ、経…

老いはじめた中国

『老いはじめた中国』読了。少し前に読んだ『老いてゆくアジア』はアジア各国の少子化問題を取り上げていて、人口学、社会学といった視点からの本でしたが、本書は中国に絞って、その高齢化社会が今後の中国の情勢、そして日中関係にどのような影響を与える…

コオロギと革命の中国

『コオロギと革命の中国』読了。コオロギと中国文化とか、コオロギを通して見る中国人の趣味生活といった本ではありません。コオロギの相撲が中国近代史、革命の歴史に似ているという著者の感覚に基づいて書かれたエッセイです。でも、よくわかりません。い…

笑う中国人

『笑う中国人』読了。 ダイアリーに既に書いたのですが、この程度の引用の場合、著作権の問題は起きないのでしょうかね? それが心配でした。それにしても中国って、さすがに文字の国、漢字の国。不満も喜びも悲しみも、すべて文字で表現してます、そのバイ…

中国に人民元はない

『中国に人民元はない』読了。 この手の、チャイナウォッチャーによる「中国というのは…」的な本は数多あります。この本もそういうほんの一種で、タイトルこそ面白そうですが、内容も各項目のタイトルはこんな感じです。ですが、どれも揚げ足取り的な感じで…

南京事件論争史

『南京事件論争史』読了。少し前に読んだ「百人斬り」の新書とは真逆の本です。本書で著者は、歴史学的に南京事件(南京大虐殺)に関しては決着がついていると書いています。このことについて、いまだに反論する人もいるのでしょうが、虐殺否定派ですら、昨…

断末魔の中国

『断末魔の中国』読了。確かに著者の言うとおり、最悪のシナリオを突き進めば、本書に書いてあるようなことも起こりうるでしょうけど、一方で著者が言うような懸念、危惧を真っ向から否定する書物も多く、それもそれで説得力に富んでいます。どちらも極端だ…

中国を追われたウイグル人

『中国を追われたウイグル人』読了。日本人の多くは、中国共産党がチベットでどれだけひどいことをしたかということについては、それなりに(おぼろげではあっても)知っていると思いますが、ウイグル人に対してどんなことをしたのかについては、著者が本文…

日本は中国でどう教えられているのか

『日本は中国でどう教えられているのか』読了。日本のごく普通の高校の歴史教師が、中国北京の中学高校で歴史の授業に参加して体験したレポートです。中国の学生、それも何かと注目されるエリート大学生ではなく、一般の中学生、高校生の声が聞けるのが、こ…

中国雑話中国的思想

『中国雑話中国的思想』読了。後半の半分を占めるのは中国拳法です。ですので、この手の本にありがちな、中国史の有名人物やおもしろ人物を取り上げて、著者が料理してみせる的な新書ではありません。各章の分量や書きぶりもずいぶんと異なります。読みにく…

北京―皇都の歴史と空間

『北京―皇都の歴史と空間』読了。北京という街の歴史を述べ、現在の都市開発の状況とのその問題や将来を紹介した本ですが、都市学というのか社会学と呼ぶのでしょうか、そういった観点からのアプローチになっています。単に北京の歴史を歴史物語風に紹介して…

中国の不思議な資本主義

『中国の不思議な資本主義』読了。中国の市場経済が今後どうなるか。永年中国で現場をウォッチしてきた著者による社会学的アプローチ。中国社会や中国経済が抱える現在のさまざまな問題の原因を、中国が発展途上国だからである、という通俗的な説明に求めず…