罔殆庵

染井吉野ナンシーの官能世界

中国の異民族支配


『中国の異民族支配』読了。

このところ、ウイグルチベットでの騒乱が続いています。三農問題、格差問題と並んで中国の民族問題が、これからの中国の発展・安定にとってかなりの不安材料だということがわかります。

これらに関する日本の報道では、ウイグルチベットよりの立場に立って、横暴な中国政府のやり方を批判する論調が主流のようですが、翻って中国政府、あるいはもっと大きく漢民族は、なぜああいう考えを持っているのか、ああいう行動に出るのか、という点ではやや物足りない感じです。

本書は、漢民族辛亥革命以来、異民族(少数民族)にどう対処しようと考えていたのかを、当時の知識人、政権担当者の発言・発表・公布文書などを通じて解き明かしていきます。

よくよく考えてみればわかっていたこととはいえ、辛亥革命において漢民族満洲族の駆逐を唱えていたわけで、孫文を初め多くの知識人たちは漢民族のみによる中華共和国の建国を考えていたようです。そのままいけば、大陸の中心部に漢民族の国、東北地方(いわゆる満洲)に清王朝を引き継いだ満洲族の国、そしてモンゴル国ウイグル国、チベット国が出来たはずです。

ところが革命後は、一転してこれらの異民族を含んだ大中華帝国を構想するようになります。辛亥革命満洲族支配を打破したものであるならば、これらの異民族が漢民族支配打破を唱えるのも同じ理屈であるはずなのに、現在の中国政府は異民族(少数民族)の独立志向を「祖国の分裂を図るもの」と見なして徹底的な弾圧を加えています。

この矛盾に、中国政府が真摯に向き合わなければ中国の少数民族問題の解決は難しいと思われます。