罔殆庵

染井吉野ナンシーの官能世界

『中国共産党「天皇工作」秘録』読了。


本書は、日中双方の政治家、研究社などに丹念に取材した成果を元に、彼らの証言から構成される日中政治交流史といった本です。交流史と言ってしまうと、かなりふやけた、甘っちょろいものを連想してしまうので、むしろ「疎遠史」と呼んだ方がいいかもしれません。

本書は前半は、中国語側が日中関係を考える上で天皇の存在をかなり重視していたことを中心に述べています。その意味では本書のタイトルは正解なのですが、後半ではほぼ全く天皇は出てきません。それでも、ポスト小泉になり、既に天皇の訪中は実現したので次は皇太子の訪中を狙っているのが共産党側の戦略のようです。

本書を読了して思うのは、中国側には日本では考えられないほどの権力闘争があるのに、それでも日中関係をかなり大局的に判断し、したたかな戦略をもって、外務省の役人や共産党の中枢部が行なっているのに対し、日本側にはそういった先を見通すような戦略も何もないということです。

結局は、中国も日本という国を無視して進むことはできないし、そうであればなおさら友好を深めたいと思っているのは明らかなのに、投げられたボールをうまく返せない日本の政治家の不甲斐なさがなんとももどかしいものです。