罔殆庵

染井吉野ナンシーの官能世界

うちでは売れないので……

タイトルは、日々営業回りをしていてよく言われるセリフです。

書評が出たり、注文が伸びていたり、理由はさまざまですが、売れ行き好調な書籍を案内し、置いていなければお勧めし、一冊くらいになっていれば面陳・平積みをお願いする、それが営業活動の基本です。

しかし、「うちじゃあ売れないから」と言われることが多いです。

そういう風に言う書店員さんの気持ちを推測するならば、「こっちは忙しいのだから五月蠅い」とけんもほろろな場合もあれば、「売れているのはわかりますし知っていますけど、うちのお店の客層と合っていないんですよね」としっかり分析された上での丁重なお断わりに分類されると思います。

後者の場合であれば、「では、こちらは如何ですか?」と他の商品を勧めるのが営業マンでしょうが、必ずしも他に動きのよい商品があるとは限らないのが弱小出版社の悲しいところです。それでも時に別に商品を案内すると「ああ、これならうちでも売れそうだ」と反応してくださる書店の方も少なくありません。

さて、営業として考えないといけないのは、けんもほろろな場合です。

確かに、大手出版社のベストセラーのように、レジの前に山積みしておいたら、あっという間に売れてしまった、なんていう本をご案内できるわけではありません。むしろシブい本ばかりです。でも、そもそもジャンルが違うので、そういうベストセラー商品と同じような感覚で見られてしまうと、あたしの勤務先の本などはすべて「売れない本」に分類されてしまいます。

ただし、売れているからこそお勧めしているのわけなので、見せ方とか並べ方などを工夫するだけで売れる可能性は大いにあると思うのです。しかし現状、その「工夫」をするだけの時間も余力もないのが書店の現状なのでしょうか? 「ポップとかある?」と聞かれれば、すぐにはなくとも社に戻って作って送ることは可能です。本音を言えば、書店の方が読んで、自分の言葉で書いてくれたポップの方が読者の心に刺さると思うのですが、そんな時間が作れるわけないことは重々承知しています。

「どんな本と一緒に並べたら売れますか?」といったことも聞かれます。これもわかる範囲で、他の書店の事例や担当編集者の意見などを聞いて伝えるようにはしていますし、そういうことを意識するのはこちらも勉強になります。並べ方の工夫の一助になればと思います。

しかし、なんだかんだ言っても、こういう意見も営業に回っていればこそ聞けることであり、全国の多くの書店では「さあ、どうしましょう?」と思われているのでしょうね。こういう書店の方へ少しでも役立つ情報を届けるにはどうしたらよいのでしょう?