罔殆庵

染井吉野ナンシーの官能世界

2008-01-01から1年間の記事一覧

〈満洲〉の歴史

『〈満洲〉の歴史』読了。 もう少し満洲国以前の満洲や満洲国崩壊後の中国東北地方に紙幅が割かれるのかと期待しましたけど、満洲にカギ括弧がついている書名からも予想できるように、基本的には満洲国を中心とした記述です。ただ、これまでの大陸侵略とか謀…

トウ小平秘録

上下本の『トウ小平秘録』読了。本書は、トウ小平の評伝とはいえ、記述が年代順ではなく、1989年の天安門事件を軸に説き起こされています。ですので、まず中国の現代史の流れがおおよそ頭に入っていないと、わかりにくいところがあるかもしれません。新聞連…

伝説の日中文化サロン上海・内山書店

『伝説の日中文化サロン上海・内山書店』読了。内山書店と言えば、まずあたしの世代では神田神保町、すずらん通りにある中国書籍専門店です。あたしが学生時代は現在の建物ではなく、二階の売り場で本を見ているとおばあちゃんがお茶を出してくれました。は…

ガイサンシー(蓋山西)とその姉妹たち

『ガイサンシーとその姉妹たち』読了。中国で旧日本軍がレイプや虐殺などを行なっていたということは知っています。そのようなことは決してなかったと言う旧軍人の証言もありますが、そういうことをしなかった人もいるでしょうから,それを否定するつもりはあ…

紫禁城―清朝の歴史を歩く

『紫禁城―清朝の歴史を歩く』読了。紫禁城の案内と、各宮殿・建物にまつわる清朝の歴史を紹介している本です。現存する紫禁城にスポットを当てているため、元明の頃の紫禁城については触れられていませんが、それはサブタイトルでも明らか。また、資料が多く…

反中vs.親中の台湾

『反中vs.親中の台湾』読了。台湾史の簡単な概論書ってのはあります。台湾の成長の奇跡を解説した本もあります。そして台湾の悲哀や日本に対する複雑な感情を記した本もあります。でも、本書のように国民党VS民進党という図式で台湾史をまとめた本はなかっ…

訓読みのはなし

『訓読みのはなし』読了。 訓読みという独特の日本文化を、朝鮮やベトナムなど他の漢字文化圏の状況と比較しながら解説しています。内容は比較的多岐にわたっていますが、それぞれが小気味よいテンポで記述されているので、物足りなさや雑ぱくさを感じること…

中国ニセモノ観光案内

『中国ニセモノ観光案内』読了。この手の本は結構たくさん出ています。それにこの夏は北京五輪ですから、いろいろ各種メディアでは中国モノが増えている感があります。でも、書籍の分野では出ている割にそれほど売れていない気もしますが……さて、本書は中国…

日中「アジア・トップ」への条件

『日中「アジア・トップ」への条件』読了。朝日新聞に連載していた著者のエッセイを、緩くテーマを設定して、それに合わせて編集したものです。中国のこの十数年の変化はとても激しいので、ものによってはちょっぴり古びた感はありますが、日本も中国もどち…

不平等国家中国

『不平等国家中国』読了。著者は数年来、中国の学者と共同で何回もアンケート調査を実施しており、その結果を踏まえた中国社会の考察です。大学教授や古典学者、あるいは特派員などの生活経験に根ざした中国モノにもそれなりの大白さはありますが、こういっ…

愛国経済

『愛国経済』読了。著者は以前から朝日新聞で中国からの記事があるとしばしば目にしていた名前の方です。比較的男性が多いと感じていた中国特派員の中で女性だったので、女性の視点ならではのルポなどを興味深く読んでいましたが、本書そういった意味では男…

中国の五大小説(上)

『中国の五大小説(上)』読了。上巻では『三国志』『西遊記』を扱っています。ところどころ中国長編小説ならではの特長などを紹介したりしていますが、そういう細かなことにはこだわらず、あらすじで読む中国五大小説、といったノリで読み進めればよいので…

新華僑老華僑―変容する日本の中国人社会

『新華僑老華僑』読了。二人の著者の共著で、完全に分担執筆です。前半の長崎、神戸、横浜という日本の三大中華街のルポは、そこに住む華僑たちの声と合わせ、三都市の個性がわかり興味深かったです。三つとも行ったことがあり、どこもそれぞれ個性がありま…

北京−都市の記憶−

『北京−都市の記憶−』読了。言ってみれば歴史的な名所を中心とした北京のガイドブックです。いわゆる本屋の旅行ガイドブックのコーナーにある本と比べると、カラーじゃないし、取り上げたのは公園とか博物館などばかりだし、入場料や開園時間も書いてないし…

二月の花

『二月の花』読了。以前に読んだ『雲上的少女』が高校生の青春を描いたのなら、この作品は大学生の生活を綴ったものです。ただ、『雲上的少女』が北京を舞台にした、まさに「イマドキ」の高校生の物語、極論すれば舞台を東京だと言っても通じるような物語だ…

なぜ中国人は日本人にケンカを売るのか

『なぜ中国人は日本人にケンカを売るのか』読了。なんとなく莫邦富さんのエッセイを思わせるところもありますが、莫さんの方がもっとギラギラとした感じを受け、こちらはさすがに孔子の直系の子孫だけあって、もう少し穏やかで優雅な感じがあります。日本人…

中国汚染――「公害大陸」の環境報告

『中国汚染――「公害大陸」の環境報告』読了。このところ新書で中国の環境問題に関する著作が何冊か続けざまに刊行されましたが、本書の場合、環境や公害問題の専門家が中国の事例にアプローチすると言うよりも、もとから中国の環境問題に関心を持って研究を…

評伝川島芳子

『評伝川島芳子』読了。著者は東大の修士を出たシンガーソングライターだそうですが、まだ若いのにずいぶんとよく調べています。コンパクトな新書ではありますが、四十年の川島芳子の一生を丹念に折っています。男装の麗人、東洋のマタハリ、中国人民の裏切…

秋瑾 火焔の女

『秋瑾 火焔の女』読了。本屋では結構売れてるみたいですね、この本。でも、売れてる理由がわかりません。とりあえず中国近代の革命の志士、女性革命家として、その凛とした美しい肖像が鮮烈な印象を与える秋瑾の読みやすい評伝が出たことはうれしいことです…

「中国問題」の内幕

『「中国問題」の内幕』読了。 中国政治のこの数年、ほんの一、二年の動きをわかりやすく丁寧に解説してくれています。さすが長年の中国特派員として現場で取材を続けてきた著者ならではです。中国の動き、それが民衆のものであれ、政治世界のものであれ、経…

老いはじめた中国

『老いはじめた中国』読了。少し前に読んだ『老いてゆくアジア』はアジア各国の少子化問題を取り上げていて、人口学、社会学といった視点からの本でしたが、本書は中国に絞って、その高齢化社会が今後の中国の情勢、そして日中関係にどのような影響を与える…

しくじった皇帝たち

『しくじった皇帝たち』読了。取り上げられている皇帝は二人、隋の煬帝と明の建文帝。文体は両者でかなり異なり、煬帝については、実はそんなにひどい人だったとは思えない、後世の人によってことさら悪く書かれてしまっているんだよということを縷々述べて…

コオロギと革命の中国

『コオロギと革命の中国』読了。コオロギと中国文化とか、コオロギを通して見る中国人の趣味生活といった本ではありません。コオロギの相撲が中国近代史、革命の歴史に似ているという著者の感覚に基づいて書かれたエッセイです。でも、よくわかりません。い…

笑う中国人

『笑う中国人』読了。 ダイアリーに既に書いたのですが、この程度の引用の場合、著作権の問題は起きないのでしょうかね? それが心配でした。それにしても中国って、さすがに文字の国、漢字の国。不満も喜びも悲しみも、すべて文字で表現してます、そのバイ…

世紀風雪(下)

『世紀風雪(下)』読了。上巻を読んだ時点でほぼ予想はついていましたが、下巻はいよいよ著者の時代、新中国の時代です。清朝皇帝一族なわけですから、文革の頃には相当な苦労があったものと思われますが、読んでいる限り、本当に底辺の生活をしたようには…

世紀風雪 (上)

『世紀風雪 (上)』読了。 清朝の皇族の苦労が偲ばれはしますが、主として清王朝時代を扱う上巻では、義和団や八カ国の侵攻など時代に翻弄される清朝の統治階級が垣間見えます。当然筆者はその時代には生まれていないわけで、祖父や父などから聞いた話で物語…

中国に人民元はない

『中国に人民元はない』読了。 この手の、チャイナウォッチャーによる「中国というのは…」的な本は数多あります。この本もそういうほんの一種で、タイトルこそ面白そうですが、内容も各項目のタイトルはこんな感じです。ですが、どれも揚げ足取り的な感じで…

南京事件論争史

『南京事件論争史』読了。少し前に読んだ「百人斬り」の新書とは真逆の本です。本書で著者は、歴史学的に南京事件(南京大虐殺)に関しては決着がついていると書いています。このことについて、いまだに反論する人もいるのでしょうが、虐殺否定派ですら、昨…