罔殆庵

染井吉野ナンシーの官能世界

中国汚染――「公害大陸」の環境報告


『中国汚染――「公害大陸」の環境報告』読了。

このところ新書で中国の環境問題に関する著作が何冊か続けざまに刊行されましたが、本書の場合、環境や公害問題の専門家が中国の事例にアプローチすると言うよりも、もとから中国の環境問題に関心を持って研究をしてきた方が著者であるというのが特色ではないかと思います。

なので、中国の公害問題を一方的に非難するのではなく、深く愛情を持って、どうしたら改善できるのか、対策を講じることができるのか解いた問題を丁寧に解説してくれています。ともすれば中国の言うことは当てにならない、といった感情論に走りがちな中国問題で、著者はかなり冷静に、そして各種データも慎重に吟味して利用しています。

なにより、実際に中国の現場を歩き、現地の研究者や実際に公害問題、環境問題の最前線で奮闘している人と直に交流して経験を深めていっているので、その言説には説得力が感じられます。

そして、昨今の公害問題、環境問題は日中(韓)が手を携え、お互いがお互いの経験を交流し合って、少しでも今よりよい方向に持って行こうという、ぶれることのない著者の主張がすがすがしく感じられます。