罔殆庵

染井吉野ナンシーの官能世界

日本は中国でどう教えられているのか


『日本は中国でどう教えられているのか』読了。

日本のごく普通の高校の歴史教師が、中国北京の中学高校で歴史の授業に参加して体験したレポートです。中国の学生、それも何かと注目されるエリート大学生ではなく、一般の中学生、高校生の声が聞けるのが、これまでにない本だと思います。

さて、この本に登場する生徒は、おおむね日本に好意を持っている生徒が多いようですが、中にはかなり嫌日感情を抱いている者もいるようです。

親日嫌日の差はおくとしても、歴史問題に対する主張が判を押したように同じであるのは興味深いです。著者も指摘しているように、中国の政府、そして政府によって統制されたメディアの画一的な日本像が広く浸透しているようです。

本文中にもありますが、中国人にとって日中間の歴史問題というのは、中国から見た場合「歴史を正視すること」です。正視、正視と言いつつ日本人から見たら、中国人はかなり偏った情報だけに頼って、政府の見解を鵜呑みにしていると思われますが、教科書や中国のメディアの報道における事実誤認なども一切顧慮されていないようです。

もちろん日本のマスコミは客観的な報道を常にしているのかと言えば、でっち上げややらせなど多々ありますが、少なくともそれを暴いたり検証したりする手段は確保されていると思います。

中国でもインターネットなど政府の監視の目をくぐって客観的事実を知ろうとしている人も増えてきてはいますが、本書に登場する生徒たちを見る限り、日常的にそういう「情報」に接しているとは言い難いようです。

結局、正視しろと言われた日本人として、これが世界的に認められている客観的事実だと示せるだけの材料をこちらが持っていないのが、もどかしいですし、もっと勉強しなければ行けないなあと感じた点です。歴史の教員である著者ですら、たぶんそうだったようです。そしてこれは、中国語のレベルの問題ではありません。中国の生徒らの意見に反論したい、自分の見解を述べたいと思ったときに、中国語ではなく日本語ですら、それを表明できない自分が情けないです。『大地の咆哮』をもっと読み込まなければならないかもしれません。