罔殆庵

染井吉野ナンシーの官能世界

中国を追われたウイグル人


『中国を追われたウイグル人』読了。

日本人の多くは、中国共産党チベットでどれだけひどいことをしたかということについては、それなりに(おぼろげではあっても)知っていると思いますが、ウイグル人に対してどんなことをしたのかについては、著者が本文中でも書いているように、あまり知らないのではないでしょうか?

かく言う私も、それほど詳しいことを知っているわけではなく、本書を読んで初めて知ったことばかりでした。ただ、東トルキスタン独立運動といった言葉自体はさすがに耳にしたことはあり、またウイグル自治区ではウイグル人から日本人が非常に好かれる(漢民族への反感の裏返し?)という話も知っていました。

さて本書は著者が述べるように、ウイグル側からの告発の書です。中国共産党の公式見解が紹介されるわけではありません。ですので、両者の意見を併記して著者が独自に分析を加えるといった性格の本ではなく、あくまで一方の側に立った本であるということです。

それがよいのか悪いのか、ウイグル問題に疎い私には俄に判断しかねますが、一般的に日本においては関心も薄く、恐らく中国政府の公式見解がそのまま紹介されがちな状況では、その真逆である本書のようなスタイルの本が出版されるのもわからなくはありません。

ところで、本書で扱われているウイグル人の問題は、はたから見るとチベット独立問題とも通じるところがあるように感じます。ウイグル人(あるいはその独立志向の組織)とチベット人(あるいはその独立志向の組織)との提携とか協力とかは模索されていないのでしょうか? そんな素朴な疑問が浮かびました。