『秋瑾 火焔の女』読了。
本屋では結構売れてるみたいですね、この本。でも、売れてる理由がわかりません。
とりあえず中国近代の革命の志士、女性革命家として、その凛とした美しい肖像が鮮烈な印象を与える秋瑾の読みやすい評伝が出たことはうれしいことです。
ただ本書の場合、評伝と言うよりはかなり小説じみていますが……
むしろ問題なのは著者の中国に関する知識です。
歴史的な事実誤認があります。曹植は曹丕の弟であって曹操の弟ではありません。これはタイプミス、イージーミスというレベルのものではないので、著者の力量が根本的に疑われます。
それに人名などの固有名詞に振るルビが中国語読みと日本語読みがごっちゃで統一されていません。どういう基準で日本語読みと中国語読みに分けているのかも定かではありません。
なおかつ、日本語読みのルビもおかしなところがありますし、中国語読みのルビの場合、基本的には普通話と呼ばれる標準語の発音で振っていると思いますが、それもどう考えても間違っているとしか思えないルビが散見します。
著者の方、中国モノを書いていると奥付にありますが、果たして中国語が堪能なのか、少なくとも向こう(中国)の文献を読みこなせているのか、非常に疑問を感じてしまいます。
こういう、ごくごく基本的なことで疑問を感じてしまうと、せっかく読みやすい物語なのに、どうも素直に気持ちよく読めないのが残念です。
それとも、これらはすべてあたしの勘違いなのでしょうか?
やはり秋瑾なら、泰淳の『秋風秋雨人を愁殺す』でしょうか? あるいは先日読んだ『コオロギと革命の中国』の方がよいのかもしれません。