罔殆庵

染井吉野ナンシーの官能世界

新華僑老華僑―変容する日本の中国人社会


『新華僑老華僑』読了。

二人の著者の共著で、完全に分担執筆です。前半の長崎、神戸、横浜という日本の三大中華街のルポは、そこに住む華僑たちの声と合わせ、三都市の個性がわかり興味深かったです。三つとも行ったことがあり、どこもそれぞれ個性がありますが、いわゆる観光地・中華街という視点で見ると長崎が一番小さくこぢんまりとしていて、横浜が一番大きく賑やかです。

でも、実際に住んでいる人の感じからすると、長崎はほどよく日本人となじんでいて、横浜が一番日本人とは疎遠であるということがわかりました。それぞれの都市の役所の対応にもそんなところが表われているみたいです。

後半の華僑の歴史では、当然のことながら、昨今の留学生の増加や彼らの日本人化(帰化)という現実も踏まえ、華僑と一括りにできないことはわかっていましたが、そのあたりのところがわかりやすくまとめられています。

戦争があったため、日本との関係だけでも厄介なのに、故郷・中国が共産党の人民共和国と国民党の民国に分裂してしまっていることが、さらに華僑社会を複雑にしています。でも、そういう国籍にとらわれず、さらに未来へ向けて歩んでいるか今日の方々の姿が描かれているのも、本書の特色ではないでしょうか?