罔殆庵

染井吉野ナンシーの官能世界

世紀風雪 (上)


『世紀風雪 (上)』読了。


清朝の皇族の苦労が偲ばれはしますが、主として清王朝時代を扱う上巻では、義和団や八カ国の侵攻など時代に翻弄される清朝の統治階級が垣間見えます。

当然筆者はその時代には生まれていないわけで、祖父や父などから聞いた話で物語を構成しているのでしょうけど、愛国的なことには熱の入った筆をふるい、そうでない事柄には淡泊な、いかにも中国人的立場だなという記述がふんだんです。

それは別に筆者が中国人である以上、仕方のないことですけれど、歴史の流れ、どうして当時の清朝はあそこまでの体たらくであったのか、そういったことを歴史学的に検討もせずに書かれると、結局は「栄光あるご先祖様」という童話にしかならない気がします。

結局、装丁とかタイトルの感じから、歴史発掘モノを期待して読み始めると、そのあたりのところに非常に不満が残ります。なおかつ、誤植がかなり多い本です。編集担当者の力量が……以下自粛。