罔殆庵

染井吉野ナンシーの官能世界

些細なことだけど……

モンスーン』読了。

このところ韓国の文学作品が日本でもブームになっていますが、本書もそんな流れの中の一冊と言えるでしょう。

ただし、巷間「韓国文学=フェミニズム」というイメージが先行しているかと思いますが、本書はそういう作品とはことなります。男女を問わず韓国社会の息苦しさ、閉塞感などを表わした作品と言えば、むしろ『三美スーパースターズ 最後のファンクラブ』に通じる作品かもしれません。

しかし本書の場合、確かにそういった韓国社会の現状が背景にはありますが、もっと個人的なこと、ささやかな日常に潜む躓きのようなものが表現された作品だと感じました。

もちろん、上に述べた閉塞感のようなものを理解していればよりリアルに感じられるのかもしれませんし、ソウルとそれ以外の都市・町との隔絶など、韓国文学を理解するためのベースがあった方がよいのかもしれませんが、そういう前提なくしても十二分にこの作品は愉しめました。それくらい自分の身の回りにありがちな「ボタンの掛け違い」のようなエピソードの集積です。

そして、この作品を読むことを通じて、そういった韓国社会の有り様が逆に理解できるようになるのではないでしょうか? 日常のちょっとした、何気ない躓きがこんな結果を招くことになろうとは……