罔殆庵

染井吉野ナンシーの官能世界

いつの頃だったか……

突然飛び込んできた池内紀さんの訃報。あたしの勤務先でも、カフカの翻訳などたいへんお世話になっていました。

あたしがまず思い出すのは最初の画像です。

啓文堂書店吉祥寺店で行なわれた池内さんのサイン会です。たぶん、あたしの勤務先のカフカの翻訳が刊行されたタイミングで行なわれたものだったと思います。当時の同店は駅直結のユザワヤビルの地下にあり、なかなかの広さを誇ると同時に駅から濡れずに行ける書店として、全国の書店の中でも上位に位置する本屋でした。

そして同店のサイン会では、特に著訳者の先生が断わらなければ、記念にお客さんと一緒のポラロイド写真を撮ってくれるというサービスがあり、あたしも撮っていただいたのが画像に写っているものです。今の時代ならお客さん持参のスマホでパチリなのでしょうが、当時はそんなもの普及していませんでした。

そして、あたしはその時に講談社現代新書の『ニッポン発見記』を購入し、母親の名前でサインをしていただきました。池内さんはサインだけでなく、ご覧のような可愛らしいイラスト一緒に描いてくださるので、サイン会も意外と時間がかかりましたが、お客さんはとても喜んでくれたのを覚えています。

ご自身で色鉛筆を持参され、いくつかあるイラストを提示して、お客さんに「どれを描きましょうか?」と聞いて、お客さんが選んだものを扉や見返しなどに描いてくれました。とても優しかった表情と物腰を覚えています。

その数年後、リブロ吉祥寺店で行なわれた、西江雅之さんとのトークイベントにも出かけました。お二人の軽妙な掛け合い、なおかつ非常に高度な内容のトークに打たれたが昨日のことのようですが、たぶん10年以上前のことだと思います。