罔殆庵

染井吉野ナンシーの官能世界

一か月ほど刊行が早かったらよかったのに? それともあえて?

岩波文庫から『楚辞』が刊行されました。

写真の一番右側です。カバーだけ見ると、ちょっと岩波文庫には見えませんが、紛れもなく岩波文庫です(笑)。

ところで『楚辞』と聞いても、中国古典に詳しくないと何のことだかわからないでしょうし、そもそも「楚辞」を「そじ」と読むことも難しいかも知れません。かつての日本人であれば、「離騒」や「屈原」の名前は一般教養の範疇だったと思うのですが、残念です。

そんな愚痴はともかく、岩波文庫ではかつても『楚辞』を刊行していましたが、あたしが学生時代には品切れ状態で、その当時、古書肆で見つけて買ったのが一番左の『楚辞』です。1935年刊行の橋本循訳注のもので、あたしが買ったのは「1984年4月5日第11刷」でした。

その後、1997年にリクエスト復刊が行なわれ、既に社会人になっていましたが、改めて買い直したのが真ん中のものです。奥付には「第12刷」とあります。

今回は訳者が代わって小南一郎さんになっています。橋本訳はもう役割を終えたということでしょう。岩波版の古典新訳ですね。

ちなみに、二枚目の写真は、中華書局版の『楚辞集注』です。あたしが学生時代の演習で読んでいたテキストです。懐かしく、わが家の書架から引っ張り出してきました。

ところで、今回の岩波文庫は6月の刊行ですが、『楚辞』の作者・屈原は5月5日が命日だと言われています。ちまきの由来にもなっています。ですから、刊行も5月5日だったらよかったのになあ、と密かに思ってしまいました。ただ屈原の命日なんて伝説ですし、そもそも古代の話ですから旧暦でしょう。となると、奥付にある「6月15日」はほぼ旧暦の5月5日ですから(今年は6月14日が旧暦の5月5日)、岩波書店としてはそれを狙っていたのかも知れませんね。