罔殆庵

染井吉野ナンシーの官能世界

辞書の話の続きを少々

先日、学生時の英和辞典について、このダイアリーに書きました。

曰く、持って帰るのが面倒なので、同じ辞典の卓上版を自宅用に購入した。曰く、学校指定、先生推薦の辞典は買わない、使わない。

ところで、先日書いたのはあくまで英和辞典の話です。あたしは大学時代に中国思想を専攻していたので、漢和辞典をよく使っていました。そして漢和辞典となると、学校指定の辞典は買わない、といった話ではなくなります。まあ、大学の専門課程ですから、学校指定の辞典なんてありませんけど。

大学でも語学の場合は先生推薦の辞典というのがあるようです。あたしが社会人になったころは、諸外国語の辞典も各社が競って作っていた時代で、勤務先の主力であるフランス語の辞典も主に次の三つの辞典がしのぎを削っていました。

すなわち『ディコ仏和辞典』『クラウン仏和辞典』『プチ・ロワイヤル仏和辞典』の三つです。先生の多くは、「この三つの中のどれかを買いなさい」といった比較的緩い推薦の仕方をするので(三つの辞典の編著者別ですが)、われわれ営業が大学内の書店に自社の仏和辞典をしっかり置いてもらえるように努力をしていたのです。

一般教養でフランス語を選択した学生であれば、確かにこの三つのうちのどれか一つを購入すれば事足りるでしょう。でも、フランス語、フランス文学専攻生であれば、三つとも購入するのが常識ではないかと、あたしなどは思っていました。だって、辞書は引き比べることに意味があるわけですから。

というわけで、上述の漢和辞典です。あたしは中国思想の専攻生でしたから、漢和辞典を何種類も持っていました。もちろん日本語誇る漢和辞典である大週間書店の『大漢和辞典』も架蔵していました。また学生時代に中国で刊行された『漢語大字典』(全8巻)、『漢語大詞典』(全12巻)も架蔵しています。

その他にも、日本で刊行されている中型の漢和辞典、現在では10種類ほどを持っております。そんなに持っていて全部使うの、と聞かれると、やはり日常的によく使うのは一つか二つに絞られます。

ただ、辞書を引いてもいまひとつ納得しなかったときに他の辞書に当たってみるのです。また辞典それぞれに創意工夫がこらされた付録も、いろいろな辞典を買う楽しみでもあります。どんな付録が付いているかで編者のセンスがわかるというものです。