罔殆庵

染井吉野ナンシーの官能世界

「似て非なる」なのかしら?

岩波新書で『ケアの倫理』という本が来年1月に刊行されるそうです。なんとなく見覚えがあるタイトルだなあどころか、全く同じタイトルの本『ケアの倫理』が、あたしの勤務先からも出ています。それも岩波新書とほぼ同じ判型の文庫クセジュで(汗)。

ちなみに岩波新書の副題は「フェミニズムの政治思想」で、内容紹介には次のように書かれています。

身体性に結び付けられた「女らしさ」ゆえにケアを担わされてきた女性たちは、自身の経験を語る言葉を奪われ、言葉を発したとしても傾聴に値しないお喋りとして扱われてきた。男性の論理で構築された社会のなかで、女性たちが自らの言葉で、自らの経験から編み出したフェミニズムの政治思想、ケアの倫理を第一人者が詳説する。

そして、文庫クセジュの方の副題は「ネオリベラリズムへの反論」で、内容紹介は如下、

「ケア」とは、脆弱と依存にある他者に配慮することである。人間は依存しあって生きるため、競争社会の中で「ケアの行動」は大切になる。配慮をめぐって社会的な絆の問題を提起する。現代のネオリベラリズムの社会とは、自律した個人が競争しあう社会である。しかしそれだけで、社会は成り立つのだろうか。人間は、実は傷つきやすく、ひとりでは生きていくことができないため人との関係、他人への依存を必要としているのだ。「ケア」とは、人の傷つきやすさに関わることであるが、その活動はこれまで私的なこととされ隠されてきた。自律した個人が競争できるのは「ケア」する人が存在するからであり、「世話をすること」の概念を見つめ直す。その倫理は社会関係の中枢に位置づけられるものであり、配慮しあう世界をめざす。本書はアメリカで始まった議論をフランスの哲学的背景からいっそう深めた解説書となっている。

同じタイトルなのに全く異なる内容の本なのか、それとも非常に近しい内容の本なのか、門外漢にはよくわかりません。ただ文庫クセジュの目次を眺めますと、「「ケア」の主題/女性たちの声」「「ケア」は母性ではない」といったように岩波新書と関わるような文言が見て取れます。

いずれにせよ、ケアという言葉から連想されるような福祉や介護などの実用的な内容ではなく、もっと人文寄りの内容の本のようです。同じ新書判なので、是非とも一緒に並べて置いていただきたいものです。