罔殆庵

染井吉野ナンシーの官能世界

中国語はおもしろい


新井一二三『中国語はおもしろい』読了。


英語も堪能で、海外生活が長く、もともとは中国語での執筆を主とされていた著者の文章は、非常に読みやすいです。恐らく、中国語もわかりやすい文章を書かれるのだろうなあ、と思われます。内容は著者のこれまでの中国語、そして中国との関わりを、時間軸を行きつ戻りつしつつ書きつづったものです。


しかし、著者同様大学に入学以後中国語に始めて接した私などから見ると、新井氏はそもそも潜在能力が抜群に高かったのではないかと思ってしまいます。だって、日本語・英語・中国語を操って、それで飯食ってる訳なんですから。


ところで、先日読んだ高島俊男さんの本には、読書人と一般庶民の間は断絶しているわけではなく、比較的容易に行き来ができると書いてありましたが、本書では識字階級と非識字階級が「厳然と分かれて」いると書いてありました(68ページ)。一見、正反対な主張ですが、前後の文脈があるからでしょうが、私にはどちらも正しく矛盾無く入ってきます。でも、同じ中国に関することでも、いろいろな人の文章に触れるというのは、自分の中国に対する見方を広げてくれるわけで、とてもいい勉強になります。


しかし、「こういう人に中国語の参考書とか作ってもらったら、おもしろいだろうなあ」とつい考えてしまうのは、ついこの前まで「編集部」に所属していた習性なのでしょうか……。