罔殆庵

染井吉野ナンシーの官能世界

とりあえず、あたしは食べ続けます

はじめての動物倫理学』読了。

ペットの多頭飼育とか、そういった動物虐待を扱う本なのかと思いましたら、ちょっと違いました。よくよく見ると、オビに端的に本書のメインテーマが書いてありましたね。

さて肉食です。

あたしはベジタリアンでもなければ、極めて狭いですが自分の周囲を見回してみてもベジタリアンだという人はいません。ただ、世間には多くのベジタリアンがいるということは承知しています。

そういう人たちを非難するつもりは毛頭ありませんし、それはそれでその人の考え方ですから尊重します。ただ、肉食をやめろと押しつけられると、まだまだ反発を覚えてしまうところもあるのが正直なところです。

動物を食べるのは残酷だと言われても、生態系には食物連鎖というものがありますし、肉食動物をすべて地球上から撲滅させることはできません。そうなると人間だけが肉食を絶つ理由が揺らぐような気がします。それに、もう数十年も前にベジタリアンという言葉を最初に知ったころに思ったのですが、動物は食べないのに植物は食べてもよいというのは生物に対して不公平ではないか、という疑問です。

もちろん植物など(昆虫も含まれるのでしょうか?)には感情がなく、痛みを感じることがないから食べても残酷ではない、ということのようですが、感情がないとか痛みを感じないとどうして言えるのでしょう。それは人間の科学が解明できていないだけかも知れませんよね。

などなど疑問に思うことはあるのですが、本書に書かれている動物実験とか非常に劣悪な家畜の飼育環境などは何とかできないものかと感じました。前者はかなりの部分、現在の科学では置き換えることができるようですが、家畜飼育はどうでしょう。著者が言うように肉食をやめればよいというのは理想ではありますが、どう考えても実現するとは思えません。

家畜の飼育環境を少しでも快適なものにすればよいのでしょうか。しかしどうせ殺してしまうのに、安楽な生を送らせる方が却って残酷ではないか、という意見もあるでしょう。結局は人間の都合で殺してしまうわけですから、難しいところです。

そう言えば、もう亡くなっていますが母方の伯父は農家で、自宅で牛を飼っていたので、牛肉は一切口にしなかったと言います。飼っている牛を食べるわけではないのに、やはり情が移るのでしょうか。それでも鶏や豚は食べていたわけですから、人間って勝手だとも言えます。

かつて「ブタがいた教室」という映画がありましたが、肉食断ちを強制するのではなく、こういう教育を広く行なって、とにかく考えてもらうのがまずは第一なのではないかと思いました。