罔殆庵

染井吉野ナンシーの官能世界

今日の配本(22/02/28)

アジアの脱植民地化と体制変動 民主制と独裁の歴史的起源

粕谷祐子 編

本書がとくに心血を注いだのは、脱植民地化を果たしたアジア諸国でなぜ一部の国は民主化し、他は種々の独裁体制となったのか、ということである。鍵となるのは、植民地期末期の「制度と運動」である。まず、制度としては自治制度と王室の二つを、また運動としては武装闘争をともなう急進的なものと非武装の穏健なものの二つを、独立前後の政治変動に影響する重要な要因と位置づける。そして、これらの制度の存否と運動の強弱の組み合わせから、四種のリーダー集団を導き出し、独立後の体制類型を解明するのだ。これまで多様に見えたアジアの近現代史は、この方法により初めて統一的な視野に収められる。比較政治学の記念碑的著作。

日本でわたしも考えた インド人ジャーナリストが体感した禅とトイレと温泉と

パーラヴィ・アイヤール 著/笠井亮平

本書は、2016年から20年まで東京に居を構えたインド人ジャーナリストの日本滞在記である。著者はインドを代表する英字紙『ヒンドゥー』の元北京支局長で、EU代表部に勤める夫と2人の息子とともに初めて来日。4年近くに及んだ滞日生活でインドでは考えられないような日常に目を瞠り、自身の知的好奇心をフルに発揮して多くの日本人や在住外国人と意見を交わした。生活習慣の違いから日本語習得の難しさ、俳句や金継ぎなどの伝統文化、政治・社会問題まで多岐にわたるテーマについての興味深い考察が本書には詰まっている。