罔殆庵

染井吉野ナンシーの官能世界

日中はなぜわかり合えないのか


『日中はなぜわかり合えないのか』読了。


莫氏の著作はそれほど読んでいるわけではないんですが、これは新書で電車の中で読むにはちょうどいいし、なにしろこんな日中関係の時期だからこそ知日派中国人の意見を知っておこうと思って…。


論調はいたって中立な感じを受けます。嫌中・反中人士から見れば、もってのほか、という意見なのかもしれませんが、あたしから見ればごくごくまっとうな意見に思えます。


ただ、日本人は中国人のことを理解していないと莫氏が語る時、それ以上に中国人は日本のこと知らないでしょ、という感想も抱きます。莫氏は中国のインターネット世論の影響力や留学生をはじめとする訪日経験者が多数いて、そういう人たちの言説が中国人にも伝わっていると言いますが、それについては日本人の方がはるかに数が多いはずです。


少なくとも日本では、あまりにも中国側に偏った意見・書籍であれ、逆に徹底的な嫌中・反中の言論でも、こうやって発表・出版できるわけで、この面では中国に比べかなり進んでいると言えるでしょう。ただ、こう書くとすぐに、中国は言論の自由がない、何も知らされていないという極端な意見が出てしまうのが哀しいところです。


また、日中のこれからを何とかしなければならないと機会あるごとに警告を発してきたと書いていますが、本書を読む限り具体的にどうすればよいのか、具体的には何も書かれていません。もちろん企業人・留学生・一般旅行者など、立場によって出来ること・すべきことは異なりますので、書きづらいところはあるでしょう。一般論を書いても抽象的になってしまえば、あまり意味があるとも思えませんし。ただ、それでももう少し具体的な処方箋を開陳して欲しかったところです。(そういうのは金をもらわないと話してくれないものなのでしょうか?)


ただ、こういった不満を感じるものの、やはり今の日中関係をよりよいものにするためには、いったん不満を仕舞った上で、莫氏の意見に謙虚に耳を傾け、ささやかでも、できることからやり始めるという態度が一番大事なのではないかと感じました。