罔殆庵

染井吉野ナンシーの官能世界

台湾 したたかな隣人

台湾 したたかな隣人』読了。


台湾在住の著者による、台湾を理解するための指南書。著者が本文中で何度も指摘するように、日本では蒋経国李登輝の治世をかなり高く評価していますが、実は市民運動など下からの動きが台湾の民主化を導いたという点が見落とされがちです。かくいう、あたしもそういうところへの視点が欠けていたわけでして、目から鱗が落ちる思いで読み切りました。


台湾の歴史や現状を民進党の誕生、発展の流れを軸に描く台湾史は中国史の一部ではなく、<台湾>の歴史という意味で非常に興味深いものです。


しかし個人的に一番面白く読んだのは、最後に取り上げている、これからの台湾について書かれた部分です。アメリカが台湾を一国家として認めてしまったら、という仮定はとても面白く、台湾に住み台湾の人々の気持ちをよくわかっている著者だからこその視点ではないかと思います。


著者が、この立場やものの見方を維持しつつ、今度は大陸中国に数年暮らしたら、いったいどんなアジアの未来図が見えてくるのか、そんなことを夢想しながら読み終わりました。