罔殆庵

染井吉野ナンシーの官能世界

とらえどころのない中国人のとらえかた

とらえどころのない中国人のとらえかた――現代北京生活事情』読了。

著者は家族連れで北京に数年間滞在していた方です。ですので、ほんの短い間滞在するだけの旅行者や、政治に振り回されがちな新聞記者、熾烈なビジネス競争に巻き込まれている企業人とは異なる視点で中国の庶民生活をのぞいています。

かなり恵まれた生活を満喫できたように思えるのは、著者やその家族の人柄にもよるのでしょうが、やはり何の偏見もない中国観が非常に寄与しているのではないかと思います。

この手の中国生活体験談モノは、日本でも数多く出版されていますが、その多くが新聞社の特派員だったり、企業の中国駐在員だったりして、この著者のような立場の人は少ないかなという気もします。(小田空さんも同じ部類でしょうか?) 大学教員の場合、得てして夏休みや春休みだけの滞在だったり、在外研修でもせいぜい一年ですから、数年滞在したこの著者の見聞は貴重だと思います。特につい数年前までの滞在ですので、変化の激しい中国便りとしても、かなり使える情報が盛られています。

さて、個人的な感想を一つだけ書きますと、著者は北京でバスに乗った時、小銭がなく大きな金額を払うハメになったと書いています。あたしも先月の中国旅行の西安で同じような経験をしました。親子三人で一人一元ですから3元払う必要があったのに、細かいのは5元札しか持っていなかったのです。

これが崩れなかったんですけど、運転手さんや乗客の人たちが、とりあえずその5元を払え、後から乗ってくる人からお釣りを回収すればいいから、というアドバイスで、次の停留所やその次の停留所から乗ってくる乗客が、運転台の横の料金箱に1元札を入れようとすると運転手さんがそのお客さんに声をかけて、その1元を私に渡してくれました。

中国の人の親切を身にしみて味わったものでした。