罔殆庵

染井吉野ナンシーの官能世界

胡同(フートン)の記憶―北京夢華録


『胡同(フートン)の記憶―北京夢華録』読了。朝日新聞で著者・加藤さんの中国記事はとても安心して、かつ信頼して読むことができましたが、その理由がわかるような加藤さんの中国体験エッセイです。

中国取材の苦労は多々あるでしょうけど、この本は取材や生活の中で触れ合った中国、そして中国人の素直な一面がよく描かれています。そんなところを引き出せるのも加藤さんの人柄のたまものではないかと思われます。

中国現代史の節目節目に中国にいたというだけあって、今となっては古き良き北京が垣間見られます。所々に差し挟まれている写真も、今とはまるで違う懐かしい北京を彷彿とさせるものが見受けられます。

一概に「昔はよかった」というような懐古趣味を主張するつもりはありませんが、88年に短期語学研修で初めて中国を訪れた身としては、やはり懐かしさを覚えます。(いまどきの北京の若者の知らない北京の姿を私が知っているなんて不思議な気持ちです。)

加藤さんがそんな風に接していた中国、私はまだ中国に対する知識も理解も浅く、ただただワクワクするだけで研修の日々を送っていたのが残念です。