罔殆庵

染井吉野ナンシーの官能世界

おじいちゃんおばあちゃんが気軽に入れる町の本屋さん

光村図書から年に四回発行されている『飛ぶ教室』という雑誌があります。光村図書といえば、あたしも学生時代に国語の教科書でお世話になった思い出がありますが、この雑誌も児童文学を中心とした雑誌のようです。

その『飛ぶ教室』の最新号、第75号(2023年秋号)を買ってみました。雑誌の存在は知っていましたし、手に取ったこともありましたが、そもそも『飛ぶ教室』を買うのが初めてのことでした。

どうして購入したかと言いますと、今号の巻頭、「本屋さん探訪」にあたしが時々営業回りで訪問している、世田谷の千歳書店さんが登場しているからです。実は同店を夏に訪問した折に、「三浦しをんさんが来店され、こんど『飛ぶ教室』に載るから」と聞いていたので、発売をちょっと楽しみにしていたのです。

そして昨日、同店を訪問したところ店頭に同誌が並んでいたので、上記の話を思い出して買ってみたというわけです。三浦しをんさんが訪問した様子は二枚目の写真のように載っていました。

対談の中でしをんさんが「千歳書店さんの棚を見ていると、ノンフィクションが充実しているな~っていつも思います。みすず書房さんや、白水社さん岩波さんの本もあるし」と、あたしの勤務先の名前を挙げてくれています。確かに、この手の版元の本も並んでいます。お店の大きさからすると違和感を感じる人もいるかと思いますが、かつてはこのくらいの規模の町の書店でも、岩波やみすずなどの本がしっかり並んでいたと思いますし、そういう書店も少なくなかったと思います。

それぞれのおすすめの本を挙げる中、しをんさんがあたしの勤務先の『ヒトラーとドラッグ』を挙げてくれました。ありがたいことです。しをんさんはかつて朝日新聞の読書欄で『バンヴァードの阿房宮』を絶賛してくれたことがありましたが、そんなことを思い出しました。

私は昔、本屋さんでアルバイトをしていたことがあったので、今の本屋さんをめぐる状況、本当に危機感を覚えています。セレクトショップ系の本屋さんは徐々に増えてきたと思いますが、おじいちゃんおばあちゃんが気軽に入れる町の本屋さんがないですよね。週刊誌などが確実に揃っていて、ふらっと来店して買っていける、そういう本屋さんが私は好きなんです。

しをんさんが最後の方で語っていたのが上のセリフです。あたしも同感です。

ちなみに、対談の中で取り上げられていた本、『ヒトラーとドラッグ』以外は『純粋理性批判』(カント、古典新訳文庫)、『カンディード』(ヴォルテール、古典新訳文庫)、『ケチャップマン』(鈴木のりたけ、ブロンズ新社)、『飛ぶ教室』(ケストナー岩波書店)、『捜査線上の夕映え』(有栖川有栖文藝春秋)の五点でした。