罔殆庵

染井吉野ナンシーの官能世界

「反日」とは何か

「反日」とは何か―中国人活動家は語る』読了。


本書の特徴は、著者自身の言葉で語るよりも、その副題にもあるように、日本のマスコミではしばしば「反日活動家」などと紹介される中国人活動家へのインタビューを中心に構成されています。著者の意見や言葉は全体の1割か2割といったところでしょうか。


本書に登場する活動家がほぼ一致して語るのは、自分たちは決して「反日」なんかではない、ということであり、反日デモなどで暴力行為を働くことには断固反対するし認めない、ただ日本のマスコミもそういったごくごく少数の人が起こした暴力沙汰ばかりを報道するのには不満がある、ということです。


まず中国人全体で「反日」とまでは行かなくても「嫌日」野一色が広まっているの事実だと思いますが、中国政府首脳から庶民まで、できることなら日本と中国は仲良くやっていきたいと願っているのも事実だと思います。


上海で「反日」デモが行なわれたその同じ時に、すぐ近くで日本人観光客のガイドをしていた中国人もいれば、日本人との商談で盛り上がっていた中国人もいたことは、確かにあまり日本では報道されていません。一部の過激な人だけを取り上げていたずらに「嫌中」「反中」感情を煽るのは、彼らが指摘するようによくないことだと思います。


ただ、それならば靖国神社参拝や作る会の教科書などを支持しているのも日本人の一部であって、そこだけを取り上げて、あのようなデモにまで突き進んでしまう中国も同じことではないかと思うのです。


彼ら活動家の意見を聞いていて気になったのは、確かにそれはそれで十分筋の通った意見ではあると思いますが、「小泉が悪い」「日本がきっかけを作った」というように、なんでも日本のせいにしてしまう姿勢です。もう少し自分たちの側を客観的に見る姿勢があってもいいんじゃないかと思います。


それとインターネットをかなり高く評価していること。日本人ならネット上の論調は確かに庶民の声や心理をとらえていることもあると思いつつも、一方で非常に冷めた目で見ていることが多いと思います。ところが彼らは、もちろんネット上の暴論を認めつつも、日本人に比べるとはるかにネットを信用し肯定的にとらえているなあと思いました。


ところで、本書に登場した活動家には日本留学経験のある人もいます。日本語が堪能な人、日本の事情ってものをよく知っている人もいます。日本に留学までした人がどうして「反日」「嫌日」に走ってしまうのか(←彼らは自分を反日だとは考えていませんが)、日本人としてこの点はしっかり考えないといけないと思います。


作る会の教科書一つをとってみても、中国人の多くは、あの教科書の主張は日本政府の立場を語っている、日本の学生は全員あの教科書で間違った歴史教育をされると思い込んでいるようですが、そういう誤解を一つ一つ解いていくことが肝要なんだと改めて気づかされます。


最近のショーと化したテレビ番組では、ほとんど中国のことを知らない評論家連中や政治家が出てきて口角泡を飛ばす勢いで中国を非難していますが、やはりそういう番組に本当に中国のことを知っている、理解している人が出て、正しい情報を伝えなくてはいけないのではないかと思う次第です。(このことは逆に中国においても、今後はますます日本のこときちんと理解している人の役割が高まることにもなると思います。)