罔殆庵

染井吉野ナンシーの官能世界

「人民中国」の終焉

「人民中国」の終焉―共産党を呑みこむ「新富人」の台頭』読了。

中国でいま躍進著しい「新冨人」を中心に据え、都市と農村、都市内部の格差をえぐったルポです。新富人と呼ばれる人たちは、持てざる者たちの羨望を越え、恨みを買うほどの存在になっており、そのような大多数の持たざる者たちの不満が、いつ政府の施策に向けられるか、中国社会は極めて不安定な状態にあるようです。

ただ著者の観察は、単純な中国崩壊論に傾くことはなく、だからといって楽観論にくみするわけでもありません。読後の印象では、実に客観的で公平な立場に立っていると思われます。学者、研究者などの調査報告や政府の公式見解、それに一般の人たちの中に入っていっての取材が、これらの論の裏付けとなっています。

そして、やはり中国社会が不安定な方向に向かっているのであれば、隣人として、長い歴的なつきあいのある日本は、少しでも安定するように力を貸すことが出来るのではないかと思わされれます。

いまの中国は、初めて自転車に乗れるようになった子供が、あまりスピードが遅いと転んでしまうので、かえって全速でペダルをこいで前へ前へ進むことによって転ばないようにしている、そんな風に見えます。