罔殆庵

染井吉野ナンシーの官能世界

女帝−わが名は則天武后

女帝−わが名は則天武后』読了。


著者は中国人ですけど、フランス在住で、この本もフランス語で書かれたみたいですね。けっこう本屋の店頭でも積まれているので、目にした方も多いと思いますが……。


さて、内容は則天武后の一代記です。物語は則天武后の一人称で進行していきますので、彼女が何を思い何を考えていたのかがわかる(?)という趣向なんですが、あくまでフィクションですからねえ。


則天武后というと、中国史上唯一の女帝であり、また自身が帝位に上った後の若い取り巻きとのスキャンダラスな醜聞が思い浮かびますが、この本ではあまり政治家・則天武后という面は強調されていません。


確かに、当時の女性としては相当利発で、夫・高宗を助けている場面は描かれますが、そこらの男性政治家よりもよっぽど有能であった辣腕政治家という描かれた方はしていません。


またもう一方のスキャンダラスな一面も特に強く打ち出されているわけではありません。つまるところ、実際の則天武后ってのはこんな感じだったんだよ、というのを見せられているような……。


天下の唐王朝を乗っ取って、当時の女性としては異例とも思える長寿を全うし、なおかつ自身が皇帝になり、その人の能力を見て有能な人材を抜擢した則天武后の波瀾万丈な人生が、あまり変化のない淡々とした人生に描かれているような感じがします。


たぶん、中国史を専門としていない多くの人には、悪女と思われていた則天武后のイメージがかなり変わる作品だと思います。