罔殆庵

染井吉野ナンシーの官能世界

周恩来秘録

周恩来秘録』読了。毎晩、寝しなに少しずつ読んでいたので、上下間でかなり時間がかかってしまいましたが、ようやく読み終わりました。周恩来の生涯のすべてを網羅したものではなく、その原題が示すように晩年の周恩来に絞って書かれています。

多くの評者が指摘するように、小心でなおかつ狡猾な周恩来という別の一面がよく描かれていると思います。これまで周恩来と言えば聖人君子のようなイメージが強く、彼がいたからこそ文革の悲劇もその程度で済んだという意見が多かったと思いますが、それがかなりの程度覆されそうな内容です。

読後の周恩来観を問われれば、どうして毛沢東に逆らえなかったのだろうか、という一点につきます。文革の初期までは他の元老たちの力添えもあったわけで、周恩来が決断さえすれば歴史はかなり変わっていたと思える場面が随所に見られます。

それでも周恩来が最後まで毛沢東に従ったのは、訳者が言うように、封建時代の君主・臣下という価値観から周恩来が抜け切れていなかったため、という説はそれなりに説得力を感じますが、果たしてそれだけなんだろうか、とも思います。

やはり単なる小心者、若い頃にかなり強烈に毛沢東に精神的に敗れてしまった、なんて体験をしているのではないでしょうか?