罔殆庵

染井吉野ナンシーの官能世界

マオ

マオ―誰も知らなかった毛沢東(上)』『マオ―誰も知らなかった毛沢東(下)』読了。


この手の本にしては文字が大きかったので、それは一般には読みやすいと言えるのでしょうが、あたし的にはむしろ読みづらさを感じました。


さて、「誰も知らなかった」と言われれば、確かに細かな事実の一つ一つは知らなかったことだらけで、衝撃だらけの本でした。


ただ、中国史を学んでいる身にとって、ここに書かれているような毛沢東の実像というのは、それほど驚くようなことか(?)と言われれば、なんか予想の範囲内、という気がしてしまうのは、根っからのひねくれ者だからでしょうか?


ただ、歴史学においては(本書は決して学術書ではありませんが…)、一見すると常識と思われているようなことも、丹念に調べ上げるといった地味な作業を欠くことはできませんし、そういう作業を経て初めて事実であると言えるわけですから、本書の功績はすばらしいと言えます。


読んでみて、毛沢東については、ああ、こういう人だよな、と驚きもせずに読めてしまう反面、むしろ意外だったのは周恩来が、あまりにも情けない人であったということです。それこそ彼一流の演技に騙されていたってことなんでしょうけど、本書を読むと周恩来があまりにも情けなく、なおかつずるい人物に思えます。


そして、周恩来に限らず、毛沢東を取り巻く人々の多くが、毛沢東の過ちに気づきながらも、何故彼の暴走を止められなかったのか、そういった疑問がわき起こってきます。本書では、類稀れな毛沢東の狡猾さには筆を割いていますが、このあたりの事情については今ひとつ納得できる説明が欠けているのではないでしょうか。


毛沢東を止められなかったのか、それとも国際情勢や国内情勢、様々な複合的な要因を斟酌すると、あえて「止めなかったのか」とも思えてきます。