罔殆庵

染井吉野ナンシーの官能世界

乾隆帝―その政治の図像学


乾隆帝―その政治の図像学』読了。清朝の最盛期を作った皇帝として有名ですし、やはり『四庫全書』などの文化事業(それが知識人対策であったとしても)でも知られてる皇帝です。

ただ、そういった政治的、文化的な業績が有名であるからこそ、本書のような空間的な、美術的な視点からの乾隆帝像というのは興味深いものでした。

その領土がそのまま天下だと思い込んでいる中国皇帝のすぐ近くに、意外と西洋の影響や存在というものが見え隠れしている、否、かなりはっきりと姿を現わしているのは、改めて驚きました。

本書は、次に北京に行ったら故宮にしろ円明園にしろ、こんどはもっとじっくり見学しようという気にさせてくれる本ですし、中国史の好きな人には面白く読めると思います。ただ、中国史にあまり詳しくない人には本書はどう読まれるのでしょう? 乾隆帝の伝記ではないので、時代背景とか、生い立ちとか、清朝史といった部分は、本書ではほとんど触れられていません。なので、そもそも乾隆帝ってどんな人、その頃の中国、清帝国ってどんなだったの、という知識をもっていないと、上滑りしてしまうかもしれないです。