罔殆庵

染井吉野ナンシーの官能世界

雲の上まで行って来ました?

研修旅行二日目はあいにくの雨でした。そんな中、まず向かったのは高知市街からバスで約90分。もう少し行けば愛媛県という梼原町です。

なんでそんなところへ行ったのかと言いますと、写真の施設「雲の上の図書館」を見学にです。こう言っては失礼ですが、行くまでは「因習に縛られた、人跡未踏の限界集落」のようなところをイメージしていました。

確かに、道中は人家も稀なところも多く、四万十川の源流になるのでしょうか、清流沿いにしがみつくように建つ民家が散見されるようなところをバスで走っていきました。正直、ここで暮らすのは大変だなあと思いましたが、図書館の周辺は町の中心部になるからでしょうか、建物も多く、ほどよく賑わいのある場所でした。

そして、雲の上の図書館です。

なんでこんな遠く離れた図書館へ向かうことにしたのかと言えば、その建物が隈研吾の設計になると聞いたからです。一度は見ておくべき建物だということで、はるばる出かけて行ったのです。

建物の外観は、確かに木を多く使っているのが目立ちますが、だからといってどうなの、と建築に疎いあたしには、やや目を惹く建物だなあという印象でした。

ところが、中へ入った途端印象が一変しました。

まず靴を脱いでスリッパに履き替える、あるいは裸足で入るのです。これは木の温もりを感じて欲しいからだそうです。確かに靴下を脱いで歩きたくなる内部です。子供なら裸足で走り回るところでしょう。

そして板張りの床も温かみがあって素敵なのですが、天井から降りてくる無数の角材。これはメインの柱を幹に見立て、そこから生い茂る枝を表わしているそうですが、もちろん耐震的なこと、強度なども考慮に入れた設計なんだそうです。

入り口から広がる大きな階段状のスペースが圧巻ですが、エントランスにはグランドピアノが置かれ、この階段がちょっとしたコンサートやイベントの座席としても使われるそうです。

こどもの本のコーナーも、書棚から床まですべて木なので、とても落ち着ける、くつろげる場所になっています。

写真の真ん中あたりに「す」という表示が見えると思いますが、この雲の上の図書館では書棚を管理する棚番号に平仮名の「いろは…」を使っているそうで、こどもの本のコーナーの棚がちょうど「す」に当たっていたわけです。

二階の一画に文庫・新書コーナーがありました。ご覧のように、こちらも木の棚です。各社の文庫や新書が整然と並んでいて、とても格好よかったです。

ここの棚番号は「ゑ」のようですね。

ここに限らず、書架にはまだ空いているスペースが散見されましたので、しばらくは蔵書が増えても問題なさそうですが、出版点数が増えている昨今、あっという間にいっぱいになってしまうのではないでしょうか? もちろん、この町の住民構成などを考えると、あまり専門性の高い本まで揃える必要はないのかも知れませんが。

上述のこどもの本のコーナーのすぐ近くにあったのがこちら、新聞コーナーです。

新聞各紙を閲覧できるようにしているのは図書館の定番ですが、ここであたしの目を惹いたのはこの新聞の収納書架です。

上部は最新の新聞の閲覧台になっていて、その下の引き出しがバックナンバーが入っています。この引き出し、閉まっている状態ではとてもここに引き出しがあるとは思えないようなデザインで、ちょっと押してあげるとスルスルと前にスライドしてくるのです。とてもオシャレでした。

新聞ですから書籍ほど重くはありませんが、それにしても引き出しの開閉はとてもスムーズでした。そして、やはり木の温もりがやさしくて温かいです。

そして、この図書館でもう一つ目を惹いたと言いますか、珍しいと思ったのは書籍に貼ってあるシールです。

ご覧のように、カラフルなドット模様です。これを専用の機械で読み取れば書誌情報などがわかるようになっているそうです。他の図書館では見たことのないこのシール、一般的な図書館で見るものですとバーコードがほとんどだと思いますが、これからはこちらに変わっていくのでしょうか?

さて、これまでの写真の中によーく見ると写り込んでいたこちらの生き物(?)に気づかれた方はいらっしゃいますでしょうか?

 

これは雲の上の図書館のマスコットと言いますか、キャラクターの「くもっぴー」です。

イラストとして、館内の看板や表示にこっそりと顔を覗かせている以外にも、人形として館内の天井からぶら下がっていたり、書架のすき間に座っていたりしています。その名の通り、雲を擬人化(?)したものです。うるるとさららではありません!

雲の上の図書館の書架を見ていると、こんなジオラマが書架にはめ込まれているのに気づきます。

つい魅入ってしまうジオラマですが、これらはすべて海洋堂の作品だそうです。なんでも海洋堂の創業者が、こちらの方の出身だということで製作をお願いしたそうです。

こんなところで海洋堂とお目にかかれるとは! そう言えば、海洋堂ホビー館四万十なんて言うのがあるそうですね。

といった雲の上の図書館見学でした。あいにくの雨が恨めしい反面、木の温もりを感じさせる建物と雨がマッチしているとも言えました。来てよかったと思える施設でした。

その後は高知市街に戻り、高知大学生協と金高堂本店を訪問し、宿にチェックインいたしました。