罔殆庵

染井吉野ナンシーの官能世界

新訳? 改訳?

光文社の古典新訳文庫から『すべては消えゆく』が刊行されました。

あれっ、どこかで見覚えのあるタイトルですね。そうです、もともとはUブックスに『すべては消えゆく』が入ってたのを、海外文学ファンならご存じのことと思います。しかし、同書は品切れになって久しいです。

そこへ持ってきての復活ですから喜んでいる方も多いのではないでしょうか? しかし、古典新訳文庫ですからそのまま出したとしたら「新訳」の名折れのはず。訳者は同じ中条省平さんですし。

ということで現物を見てみましたら

本書は一九九六年六月に白水社から刊行された『すべては消えゆく』を大幅に加筆・修正したものに、別の二篇を新たに訳して加えたものです。

という注記がありました。つまりは改訳ということになりますね。ちなみに「別の二篇」とは同書収録の「クラッシュフー」「催眠術師」の二篇で、これがタイトルに「マンディアルグ最後の傑作集」と名付けた所以でしょう。

ちなみにマンディアルグ作品で、あたしの勤務先でまだ在庫のあるものは『城の中のイギリス人』と『オートバイ』のみになります。

以前は『狼の太陽』とか、『薔薇の葬儀』『黒い美術館』『燠火』といった作品もUブックスにあったんですけどね……

来年は没後30年、復刊できないものでしょうか?