罔殆庵

染井吉野ナンシーの官能世界

あたしの学生時代に使えていたら……

明治書院の『新釈漢文大系』は、学生時代に漢文を読むときにまずは参照する現代語訳のシリーズでした。全120巻なのですが、あたしが学生のころはまだ全巻完結しておらず、早く出ないかなあと待っている巻もたくさんありました。

そんな『新釈漢文大系』ですが、函入りの高価なもので、個人で持つなんてなかなかできるものではなく、あたしも専門にやっていた『史記』だけは買い揃えていましたが、それ以外は図書館で閲覧するのが一般的でした。これだけの巻数があると、主立った古典はだいだい収録されていましたので、中国学専攻の学生には重宝がられていたと思います。

数年前に全巻完結したという話は聞いていましたが、それがこのほど有料のデータベースサイト「ジャパンナレッジ」のコンテンツに加わったのです。全巻引き放題、自宅に買い揃える必要もなく、図書館へわざわざ調べに行く必要もありません。自宅にいながらにして全巻を見ることができるのです。大学図書館などであれば、「ジャパンナレッジ」が利用できると思いますので、いまの学生はいくらでも使えるわけですよね。羨ましいかぎりです。

しかし、もちろん紙で引くことの長所もありますので、最初から「ジャパンナレッジ」で利用するのではなく、大学一年生、二年生のうちは図書館で紙の『新釈漢文大系』の頁を丹念に繰ってもらいたいと思います。それが財産となるはずです。

ちなみに、当時は集英社の『全釈漢文大系』とか平凡社の『中国古典文学大系』といった中国古典の大型シリーズがいくつかあり、角川書店徳間書店からも現代語訳のシリーズが出ていました。またちょっと古いですが、『国訳漢文大成』や冨山房の『漢文大系』なども併用していました。懐かしい時代です。