罔殆庵

染井吉野ナンシーの官能世界

「日中友好」は日本を滅ぼす!

『「日中友好」は日本を滅ぼす!―歴史が教える「脱・中国」の法則』読了。


日本史において中国と距離を置いた平安時代や江戸時代は日本が発展し、中国にかかわった時期は日本は混乱に陥ると述べる導入部。そういう見方もあるのかなという気持ちで読みました。この論をきちんと肉付けしていけば、それはそれで面白い日中関係史の本が出来上がりそうなのですが、著者の説明はごく簡単にあっさりとすまされてしまい、論拠も弱く、とてもうなずけない意見だと感じてしまいました。それがちょっと残念です。


本書の大部分は、おのずと近代以降の日中関係で、中国とほとんど無関係に脱亜入欧を目指した明治、復興に励んだ戦後は日本の発展期となり、昭和の大陸侵略や国交回復後の中国と関係を持った時期は混乱期であるという論調です。


このような立場に立ち、果たして日本は今後も中国と友好的にやっていけるのか、アメリカと手を切ってまで中国に肩入れするのは果たして得策なのかという意見。これには啓発を受けました。日本は非常にたくさんの国と国交を結んでいますが、どの国との間でも「友好」なんて声高に主張しておらず、中国と国交を結んでいる欧米諸国も別段「友好」を叫んではいない、なぜ日中だけが「友好、友好」と騒ぐのか、著者の石林氏はそう言います。友好なんて謳わなくてもいいから、ごく普通の国と国関係でいいじゃないか、という主張には、実際大陸で事業を展開している企業人には「そんな簡単なものじゃない」と言われそうですが、今後の日中関係で、意外と大事な視点なのかもしれません。