罔殆庵

染井吉野ナンシーの官能世界

漢字伝来

漢字伝来』読了。


漢字に関する本はたくさんありますが、本書は日本語として、日本語を書き表わす道具として漢字が定着していく過程を丹念に解説したもので、専門的な書籍を除けば、他に類を見ないものではないでしょうか?


ただ、最初にも書きましたように、漢字に関する雑学的で面白おかしい本がたくさん出版されている中にあっては、本書は新書とはいえ、やや堅い本です。


また比重が日本古代史に置かれているため、古代の日朝中の関係史などに興味のある人には面白いでしょうが、そうでない人には歯ごたえがあったと思われます。


それ以上に、音韻学的な記述の部分が、どうしても紙面では伝えにくいものですから、漢字の蘊蓄などを手軽に知りたい読者にはあまりにも本格的すぎるのではないでしょうか?


個人的には、漢字の日本への伝来となると、当然中継地である朝鮮の事情ってものが知りたくなります。本書では中国周辺国での漢字や文字の事情ってものに章を割いている部分がありますが、朝鮮における漢字の伝来、定着、朝鮮語化について、もう少し紙幅を費やしてくれると面白かったと思います。