罔殆庵

染井吉野ナンシーの官能世界

中国の不思議な資本主義

『中国の不思議な資本主義』読了。中国の市場経済が今後どうなるか。永年中国で現場をウォッチしてきた著者による社会学的アプローチ。

中国社会や中国経済が抱える現在のさまざまな問題の原因を、中国が発展途上国だからである、という通俗的な説明に求めず、それが中国の社会そのものの性質によるものだということを説いています。

その論旨はわかりやすく、「確かに中国ってそうだよな」と思わせる面も多々あります。ただ、著者ほどではないにせよ、私もこの数年毎年のように中国(主として北京と上海)を訪れていますが、年々庶民のマナーが向上しているのを感じます。タクシーに乗っても、あるいは街を歩いていても、以前ほどクラクションの音がしなくなったのは実感としてわかりますし、列に(きちんととまでは言えないにせよ)並ぶ中国人が多くなったのも間違いのない事実です。

つまり、遅々としてではありますが、そして北京五輪に間に合うのと聞かれれば疑問符をつけざるを得ませんが、中郷の人々も着実に欧米的な常識を身につけるようになってきていると思います。そんなところにも、もう少し目配りがほしいなあと思いました。

それと、これはあくまで私の個人的な感触ですが、中国の人には悠久の歴史に根ざしたプライドがあります。ですから「こんなことも出来ないで、よくも五輪なんかやれるな」式の批判を受ければ、意地でも出来るように努力する人たちでもあると思います。中国人のそういう部分には触れられていないので、そのあたりの点をもっと聞いてみたいところです。